海東 英和町長
滋賀県新旭町は、琵琶湖の西岸に面した人口約1万1千人の町です。多湿の気候や水の豊かな風土を生かし、古くから綿織物工業の町として栄えてきました。湖辺につくられた新旭風車村にはエキゾチックな風車が三基まわり、豊かな景観を創り出しています。
昨年九月に新旭町を訪問した際の、海東英和町長へインタビューをまとめました。
町長:クリーンな風力で電気を起こし、水を浄化しようということで始まった風車村でしたが、発電量は充分とは言えず、観光的な施設と考えてもここだけでお客さんを満足させることはできませんので、ゆくゆくは風車村公園を、環境や健康に関する情報を発信できる施設にしたいと思っています。
また、これは滋賀県知事も提唱されていますが、菜種油で車を走らせようという動きがあります。当町においても農業政策と絡めつつ、県とタイアップして栽培や研究を進めています。今はBDF(バイオディーゼル燃料)担当者が共同作業所を支援し、廃食油を回収しています。
町長:全町で回収を実施しています。もともと当町は、琵琶湖のせっけん運動発祥の地なので、今までは廃食油をせっけんとして再製品化利用してきましたが、今後はこれを燃料としても活用していきたい。自分たちの出した廃食油が、幼稚園のバスを動かしているといったように、リサイクルを町の人の目に見える形にして、皆さんの暮らしを元気にできればと思っています。実用化に向けて、99年9月には社会福祉法人「虹の会」が運営する社会就労センターアイリスの廃食油プラントが立ち上がりました。
町長:新旭町は滋賀県の琵琶湖に面していますが、湖岸のヨシ帯は滋賀県で保護すべき三大ヨシ帯のひとつです。水辺には沢山の生物がおり、水路、田んぼ、沼地、畑、そして雑木林に至る中で命の循環を繰り返しています。そうした循環を大切にしようというのが、里山保全の考え方です。東北や北海道のようなダイナミックな自然ではないけれど、人々の身近な生活と共に、沢山の生命が循環している、そうした自然を今後とも守っていきたいと思っています。
里山は、人気のない自然ではなく、人と生きものとの交わる自然です。町内にも自然観察会を行ったり、里山の手入れをしたりする団体がありますが、こうした人の手が入らなければ生きものも循環しない。ある意味では東洋的な自然観と通ずるものがあるといえるのではないでしょうか。私たちの日常の暮らしがそのまま、生きものの命と共存していることを、もっと多くの人に知ってもらいたい。とにかく民間の方たちが元気なので、連携しながら、共に光る仕組みをつくりたいと考えています。
町長:先ほどの里山もそのひとつですが、住民が環境をしっかりと見据えた暮らしづくりをしたいと常々考えています。ドイツなどではごみの削減、再利用、リサイクルが明確に人々の暮らしの中に位置付けられています。決して派手とはいえない地道な取り組みが、むしろ重要なのではないかと感じています。そうでなければ、いくら環境テーマパークをつくったところで、結局は何も変わらないのではないでしょうか。
こうした日々の取り組みというところには、農業政策も含まれます。当町では行政が本腰をあげないうちからすでに、農家の方々の有機栽培、低農薬栽培の取り組みが行われてきました。あるグループなどは自主的に、大阪の泉北の生協と契約して十五年ほど前から米を販売しています。また、泉北の消費者団体を招待し、栽培米の見学なども行われています。
県内においてもこのところ、学校教育の一貫として、農業を通して下流域や大阪の子どもと交流する機会が、年々増えつつあります。当町でも農業小学校ができ、地元の子どもたちが実際に農業を体験をし、米を作るプロセスを学んでいます。どちらかというと子どもよりむしろ、親のほうが喜んでいるようですが。農業小学校は、小学校の先生と農協が主催しています。
循環型地域づくりという点では、先だって綾町長のお話を伺いましたが、綾町と当町とは完結型かそうでないかというところで大きく異なっていると感じました。当町には広域の都市型下水道が整備されつつありますが、綾町は町でし尿処理をして肥料に還元する仕組みがある。そうした違いも考慮しつつ、地域における環境配慮の仕組みを構築していきたいと考えております。
町長:滋賀県の土木課などでも、自然に配慮した施工法などを考えているようです。最近は災害なども起きていますので、その点も充分考慮した上で、自然型工法を進めてもらえるようにと願っています。いずれにしても、環境課以外の行政担当者が環境に対して理解しなければ、こうした改善はうまく進みません。当町における環境担当セクションは環境課ですが、建設課や福祉課などそれぞれの分野において環境配慮の仕組みを考え、町全体としてのグレードアップにつなげていきたいと思います。
私としても懇談会にはできるだけ出席し、皆さんと一緒に話しつつ流れを固めていきたいという気持ちが強くあります。大きな市の市長ではなく、人口一万人の町長であるというメリットを大切にしたいと考えています。
(99年9月20日 新旭町役場にて)
聞き手:中口毅博(環境自治体会議事務局)