水俣会議宣言

わたしたち環境自治体会議は、人類の生存を左右しかねない、迫り来る環境危機の回避に向け、自治体の果たす役割を積極的に引き受け、住民と行政が協働して環境自治体づくりを推進するために、20世紀に起きた世界に類例のない産業公害である水俣病を経験し、その影響を克服しつつある水俣に集い、未来を共有するために過去を振り返り、今を話し合いました。

水俣病事件は、一万人をはるかに超える膨大な被害者が発生しただけでなく、生活の場である地域社会に深刻な影響を与え続けていること、しかも、わたしたちの物質的な豊かさを支えるために起きたこと、いったん破壊された環境の復元は非常に困難なことを教えてくれます。

水俣の経験から、生命を尊重し、環境危機について予測し予防措置を講じ、環境汚染と破壊の当事者にならないよう自治体自体が、危機管理の能力を持つことの必要性を知りました。

水俣の会議では、21の分科会という異例の数で生活現場に基づいた環境政策が議論されました。

公共施設づくりにも環境配慮が求められていること、住民参加と協働は環境自治体づくりの根幹であること、生活づくりには住民みずからが地域を知ること、差し迫っている環境保全型の農業づくり、ごみ対策と地球温暖化防止は急務であること、物質とエネルギーの循環に向けて地域で仕組みづくりを進めること、中山間地の環境保全型地域づくりを流域連携と交流で進めること、環境教育を充実していくこと、そして、経済的な豊かさに加えて自然の豊かさ、地域のくらしを楽しむ豊かさを行動の基本にしていくこと、地産地消、身土不二の考え方で地域の資源とエネルギーの循環に基づき行動していくこと、そして、ゼロエミッションを基本的な目標に産業連関の中で廃棄物をゼロにする取り組みを日本に、世界に広げること、などを話し合いました。

わたしたちは、対立を創造のエネルギーに転換し、市民と行政の協働の場をつくりながら、環境資源基盤を保全充実し、持続可能な社会を創造していくために、様々な生命の存立基盤である自然に畏敬の念を持ち、生産、消費、分解、再生産という自然の循環に学び、共に生きるために、素材の調達から製造、使用、廃棄段階まで、資源やエネルギーの使用の最大効率化、化学物質使用の削減、廃棄物の発生や環境汚染の発生を極小化していきます。また、地域の個性を自ら把握し、変化を適正に受け止め、なじませ、自治能力を充実していきます。

わたしたち環境自治体会議は、以上のことを達成していくために、ゆるやかな共通の目標を持つことにしました。各自治体は、この共通目標に向かって切磋琢磨し、各自治体の個性に応じて数値化を含めマネジメントしていくことに努めます。なお、毎年取り組み状況を公表しながら、2004年には達成度を評価します。

舟を岸につなぐ「もやい綱」が時とともにもつれるように、現代社会は、人と人、人と地域、人と自然の関係が混乱しています。わたしたちは、水俣の「もやい直し」に学び、環境破壊の悲劇を繰り返さないため、人間同士、人間と自然の地球規模での「もやい直し」に挑戦します。来る21世紀に向け、自治体の果たす役割の重要性を自覚し、さらに積極的に環境自治体づくりを進めていくことをここに宣言します。

第8回 環境自治体会議水俣会議参加者一同  2000年5月26日