米国自治体の成功例に学ぼう!〜実効性ある温暖化対策の姿〜(2)
ニュース前号で紹介した米国の自治体首長の気候保護同意書の署名数は10月21日までに187に達した。当初、この同意書への署名数の目標は、京都議定書の批准国の数(2月の発効時点で141か国)と同じ141市長であったことからすれば、当初の目的を達し、さらにその数は増え続けているようである(なお、全米市長会議の会員は約1200〜人口3万人以上の市)。
今回は前回に続き、気候保護同意書の呼びかけ人となった市長が率いるミネアポリス市、そして同市と対策を共同実施しているセント・ポール市をとりあげ、温暖化対策の成功要因を探ってみたい。
(文責:増原直樹/環境自治体会議環境政策研究所)
●ミネアポリス―セント・ポール市ではCO2総量12%削減!
ミネソタ州を源流とするミシシッピ川の両岸に位置するミネアポリス市(人口約37万人)と州都セント・ポール市(人口約28万人)は、形状が酷似していることから「ツインシティ(双子の都市)」というニックネームで著名である。この2市で共同して温暖化対策に取組んだ成果として、1988年から98年の10年間でCO2排出総量は12%削減されている。
この双子の都市は周辺の諸都市とともに、92年からICLEI(国際環境自治体協議会)のCCP(気候保護に取組む都市)キャンペーンに参加している。特に、セント・ポール市は全米でもっとも早期に成果をあげた都市の一つといわれている。成果をあげた手法には、市有の建築物の改修、照明等設備の更新、土地利用計画、地域冷暖房の導入、公共交通の選択肢の増加、都市内緑化、再生可能エネルギーの利用促進、排水処理の効率化、リサイクル・廃棄物削減プログラムなどがある。
●2市共同で都市CO2排出削減計画を策定 〜2005年に20%のCO2総量削減を〜
セント・ポール市の取組みは、ミネアポリス市と共同で93年12月に議決された「都市CO2排出削減計画」及びその計画の一部である「環境・経済パートナーシップ・プロジェクト」に基づいている。
削減計画の検討に当たっては、両市の市長・市議の他、電力会社であるNorthern States Power(現・Xcel)、電力・ガス会社であるMinnegasco、製造業のHoneywell、3Mといった事業者の他、非営利のエネルギー・サービス提供主体(エネルギー・環境センター、環境・エネルギー資源センター、近隣エネルギー・コンソーシアム)、都市圏議会、環境団体の代表者、ミネソタ大学教員などが参加した。
セント・ポールで93年に議会で承認された数値目標は「2005年までにCO2を88年レベルから20%削減する」というもので、その中間地点として97年までに同じく7.5%削減するという目標が設定されている。基準年の排出量推定値は570万トンであるが、その後、2005年の排出量予測値の20%に相当する約240万トンのCO2を削減するとしている。
●セント・ポール市におけるCO2削減計画
この目標を達成するために、以下に述べる6つの戦略が計画に位置づけられ、それぞれの分野の目標と実績は表1のようになっている。

第一に、市役所自身の行動計画である。設備の更新と効率化で市有建築物(車両)のエネルギー利用についての模範を示す役割が期待されている。また、環境配慮型製品を選ぶグリーン購入も含んでいる。表1に記載の2万2600トンの主な内訳は、130の市有建築物における設備更新が8400トン、街灯と信号照明(LED)の改修で1600トン、石灰を用いた汚泥の脱水設備の導入で1060トンである。
第二に、交通セクターの多様化である。多様化の意味は公共交通の選択肢を増加させることで自動車への依存を減らすねらいである。毎年73万1000トンのCO2排出削減を目標としているが、実績は定量的には示されていない。取組みとしては、自転車レーン・専用道の整備、公務員(市及び郡)の鉄道定期券利用促進プログラム、“hOurCar(私たちを示すOurと時間貸しを示すHourを兼ねた表現)”と名付けられたカーシェアリング・システム、交通信号のコンピューター制御、駐車場案内システムの高度化、LRT整備などである。
第三に、都市内緑化である。緑地を広げ、樹木を屋上などへ植えていくことで、排出された炭素の固定化と建築物の冷却効果(冷房用のエネルギー消費削減)をめざすものである(CO2毎年3100トン)。具体的には、川沿いの1200エーカーの土地に3万1000本の樹木を植え(ミシシッピ川沿いに毎年5000本×5年、それ以外の公共空間に毎年1200本×5年)、動物の生息地をも確保するとともに、レクリエーションや商業の促進、大気の浄化もねらう。
第四に、エネルギー効率の向上である。住居や業務、産業部門における照明や空調、断熱についてコスト的にも効果のある効率向上策を実施することで、毎年24万2800トンのCO2削減実績となっている。内訳は、温水を利用する地域暖房の導入(毎年18万3100トン)、地域冷房サービスの導入(毎年6500トン)などである。
第五に、エネルギー供給である。これは、太陽光発電、風力発電、バイオマスや燃料電池などの代替エネルギー源の利用を促進することで、毎年59万4000トンの削減実績をあげている。具体的には、地域暖房に接続する木質バイオマス利用のコージェネレーション導入(25MW)で、28万トンの木質廃棄物を燃焼させ、およそ2万軒の住宅の電力需要を賄うとともに、28万3000トンのCO2削減につながる。
第六に、リサイクル・廃棄物発生抑制である。資源の再利用やリサイクルを進め、毎年8万9000トンのCO2削減実績をあげている。
進行中・計画中のプロジェクトのCO2削減量は2003年までに年間総計96万トンに達している。これは2005年までの目標の4割に相当し、97年時点でみた場合は中間目標を1割超過して達成している。また、それらのプロジェクトの結果として節約されたコストは年間5980万ドルに達している。
また、二次的効果として、雇用の増加・経済の活性化、都市の知名度アップ、大気汚染の軽減の結果として住民の健康が守られたり、様々なセクターとのパートナーシップの結果として政府の改革が進んだりといったことも注目されている。
●ミネアポリス市におけるCO2削減計画
ミネアポリス市でも、2005年までに1988年比で20%削減という同様の目標が設定されている。この目標達成のために、96年にはミネアポリス市エネルギー計画が策定されているが、この計画は10年以内に元がとれるエネルギー効率向上策に重点を置いている。99年までの成果をみると、交通や廃棄物・リサイクルといった分野を中心に、2005年までの削減目標量のうち9%にあたる36万4000トンのCO2削減を達成しており、エネルギー費用は毎年2164万2000ドルの節減となっている。

●米国自治体の取組みから学べること
米国と日本とでは、自治体をとりまく制度や人々のライフスタイルも大きく異なるため、一概に比較することは困難である。しかし、温暖化対策を実効性のあるものにしていくためのヒントは共有できると考えられる。そこで、中間段階での試案として3点をあげてみる。
- 省エネしやすい環境づくり
オレゴン州(ポートランド市)の事例にみられるように、エネルギー効率を向上させたり、再生可能エネルギー導入を促進したりするための「エネルギートラスト」の設置が、欧米諸国では一般的になっている。エネルギートラストの機能は日本の省エネルギーセンターのそれに近いが、欧米諸国の場合、より地域に密着した形(州単位・市町村単位)で活動していること、そして市民にとって使いやすい補助メニューが多様に整備されていることが異なっている。日本においても、最低都道府県に一つ、できれば市町村に一つはエネルギーに関する非営利のサービス窓口が必要であろう。例えば、温暖化防止活動推進センターがそのような機能を担っても良いが、現状はそうなっていない。
- 設備更新の意義を明確化
日本の自治体でも公共施設へのESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業導入など、従来の省エネ活動でみられた「ケチケチ運動」「こまめちゃん現象」に比較して、効果が持続する温暖化対策がとられるようになってきた。しかし、多くの自治体では、役所の内部ばかりか住民に対しても従来と同じ呼びかけしかできていない。
特に、家庭の温暖化対策としては、待機電力削減・冷暖房の温度設定といった従来の手法は限界に達しており、省エネ型の家電への誘導や住宅構造の省エネ化のほうが重要であることは明確である。こうした家電・住宅構造といった設備の更新を促す対策が今回とりあげた2つの事例の中では重要な位置づけを占めている。
- 交通まちづくり」を含めた広範な温暖化対策
交通分野の取組みとしては、ポートランドのLRT、ストリートカーやセント・ポール市のカーシェアリングなどがあった。日本の自治体では、米国自治体と交通政策に関する権限が大きく異なるのかもしれないが、まち全体の交通ビジョン(目標)が不明確な中での単発的な自転車道整備あるいはコンセプトのはっきりしない無料レンタサイクルの整備なども散見される。
参考文献