4.共通目標の係わる全国的な動向

◎ 全般

この資料は、一ないし数個の都道府県単位で発行される地方日刊紙から、2000年8月〜2001年3月までの期間で、共通目標に関連した記事を抽出し、その傾向を分析したものである。もとより新聞記事であるので、情報が科学的な重要度によって選択されているとは限らず、各社でニュース性があると評価した情報が収録されている。また、いわゆる「話題性」に左右され、重要ではあるが日常化した話題についてはニュースとして浮上してこない。こうした制約はあるが、いま環境に関してどのような情報が社会的に注目されているかを知るとともに、逆に注目されていない情報について、社会的な関心を惹起する必要性についても検討することができる。

@ 地球環境

この項目は、省エネ・環境にやさしいエネルギー(新エネ、代替エネ)・地球温暖化防止に関する内容を扱う。

省エネに関しては、建築物(業務用ビル)の空調に関する省エネに関する記事が目立ち、北陸電力など夜間蓄熱が取り上げられている。一方でコジェネに関する記事は見られなかった。自治体の省エネ行動計画(青森県)や、庁舎自体の省エネ(青森県)に関する記事が数件ある。

環境にやさしいエネルギーでは、風力に関する記事が最も多く、次いで太陽光であった。風力では、商業規模へ向けたスケールアップの傾向が感じられる。

地球温暖化防止に関しては、CO2の削減とともにフロン対策の進展がいくつか見られた。

報道件数として原発が最も多く、一部で建設の手続きが進んでいる事例があるが、全体には行政も慎重な姿勢を示し停滞の傾向である。既存火力の休止や新設凍結の記事が数件ある。

なお原油価格の高騰の影響で、ガソリンや灯油の値上がりの記事が多かった。価格の上昇が消費量削減や省エネにつながる可能性があるとは言うものの、特に北国では灯油価格が冬期の生活費に影響を及ぼすため、環境問題というより生活面からの記事が多かった。

市民レベルでの省エネへの取り組みでは、環境家計簿を全世帯に配布(岩手県)などの記事があるが全体に低調である。個人の行為なので記事に出てこないという理由が考えられるが、そもそも省エネへの関心が薄れている可能性もあり、社会的に関心を惹起する必要性を感じた。

A 大気環境

この項目は、大気汚染および環境負荷の少ない交通手段に関する内容を扱う。なお記事の件数でみると、産業起源の汚染の記事は皆無であった。

全体的な印象として、公共交通の縮小が伝えられる一方で、高速道路の開業や、一般道路の改良など、自動車交通の増加を招く傾向、あるいは実際に増加したことを伝える記事もあり、交通部門での環境負荷の低減の難しさが感じられる。

自治体の補助あるいは直営によって、公共交通を維持する事例が多く報道されているが、環境負荷の低減というよりも、住民のモビリティをどのように維持するかが深刻な問題となっている。もっとも、これに相当する自動車(マイカー)交通が代替されていると評価すれば環境負荷の低減であるという評価も可能である。形態として、全国的に普及しつつあるコミュニティバスと、民間事業者による低運賃の100円バス(公営では小松島市営など)が注目される。

公共交通の活用とまちづくりと結びつけた活動のシンポジウムの開催や、パーク・アンド・ライド(岡山市など)ほか、何らかの意味でのTDMに相当する対策の報道は多く、社会的な関心そのものは低くないと評価できるが、まだ実験段階と言える。

自転車の利用促進(白石市など)に関する事例も何件か見られるが、放置自転車がらみの事例も含まれ、環境対策としての自転車の利用は、面的な拡大に至っていない。

自動車の単体対策としての低公害(低燃費)車に関しては、CNG、廃食油再生燃料の記事が何件が見られるが、台数が限定的であり、大気環境の改善そのものへの貢献よりも、普及啓発の目的が主と考えられる。

B水環境

この項目は、清らかな水辺環境と生活排水の処理を扱い、主に浄化槽や水質向上の活動等に関しての記事が当てはまる。

下水道の建設と合併浄化槽の導入の議論は平行線をたどったままであり、両者の間での手法、環境負荷の影響等に関する比較検討がなされているとはいいがたい。また、湧水保全の運動や水源の森づくりの運動等のきれいな水質を保つ活動と、下水道建設見直し運動との結びつきが弱い。下水道をやめて合併浄化槽設置を促進した二ツ井町のような事例はまだ他には見当たらない。

河川の有機性汚濁に関する記事は少なくなり、一般化した感が強い一方、化学物質による地下水汚染の記事が増えてきている。規制されている有害物質以外の化学物質に対してどんな対策を講じていくのかが今後の課題である。

自治体でも旧建設省の指導により、流域単位で河川を保全し水質を向上しようとの検討会が設立されはじめている。10月5日に設立された肱川水系環境検討会(愛媛新聞社/2000年10月6日)をはじめとして現在幾つもの検討会が活動している。

水源税の導入については、すでに神奈川県、愛知県豊田市、福岡市などが、水源保全基金などの名目で水道水1立方メートルあたり約1円を利用者から徴収しているが、税方式ではない。高知県知事が早ければ2002年度から水源地域における森林整備費にあてるという名目で、水源税を導入したいとの意向を示している。実現すれば全国初となる。

河川改修事業については、近自然工法による施行が定着してきており、都心の市民参加型ビオトープや環境学習の拠点として、水辺が注目されている。また、河川・海岸のクリーンナップ等も環境学習的な要素を取り入れつつある。

近年新たな課題として、都心の河川構造、下水道構造による都市型水災害が浮上している。河川管理のあり方とともに、生活と水とを分断して管理するこれまでの政策が見直しを迫られている。それと対応して、輪中堤と宅地かさ上げをあわせた地域単位による土地利用方策が有効な河川管理の一手段として再認識されつつある。さらには建設省の河川審議会が大洪水時の川の氾濫を許容するとの従来とは異なる答申も出した。従来の隔離・管理型から、自然の地形を生かし、地域単位で水と上手につきあう手法が提唱されはじめた。

C 自然環境・水循環

この項目は、流域や地域内の循環としての、農林漁業、森林、水環境、身近な緑、そしてそれらの公益的機能の問題などを扱う。

農業に関しては、地域活性化に向けての取り組みとして有機農業が多く取り上げられており、有機栽培産物等の認証についての記事も目立ち始めたが、環境保全型農業の事例は実状と比較すると数が少ない。生息環境の悪化に伴ったシカなどの野生動物の食害の記事もいくつかあり、様々な対策講じているものの苦労している自治体が多いようである。また、WTOにより農業政策をめぐる状況は変化するが(神戸新聞2001年2月15日)次期農業・農村計画など新たな枠組みについての記事は少なく、自治体独自の施策や事業等具体的な事項についての記事が多い傾向である。

地域の自然資源を活用した産業に関する記事としては、農林業体験ツアーや体験センターの開業などがあるが、まだ産業として展開されておらず、全体的に普及啓発の段階である。

水循環に関しては、ダムなど公共事業の見直しが2000年は目立ち、特に諫早干潟についての記事は多い。沖縄の赤土被害の記事もいくつかあり、利水事業負担金裁判についてもいくつか記事がある。

流域連携に向けての試みは、シンポジウムや体験ツアーなどといった一時的な取り組みが多いが、流域ネットワークや流域学会の記事がいくつかあり(山陽新聞2001年3月29日など)また、水道料金へ上流域の環境保全のための基金を上乗せする木曾の事例は先進的である(信濃毎日新聞2000年12月13日)。

身近な緑の保全に関しては、学校でのビオトープつくりの記事が多く、次いで植林や里山保全の記事が多い。都市の景観条例などについての記事の数は少ない。(静岡新聞2001年2月14日)

D廃棄物

2000年4月完全施行の容器包装リサイクル法をはじめ、食品リサイクル法、さらには本年4月施行の家電リサイクル法と、廃棄物処理をめぐる変化は著しい。大型家電製品の不法投棄の実態や、引き取りのめどがたたない資源ごみの対応に苦慮する自治体現場の混乱と苦悩がにじむ報道記事が目立つ。

リサイクル法に対応した廃家電回収システム構築に関する動きは数多く見られ、長野市のように法施行後も4品目回収を継続実施する方針を打ち出す自治体がある(信濃毎日新聞2001.01.23)など、個別自治体ごとに対応策が検討される一方で、不法投棄に関する報道は増加の一途をたどる。ごみ不法投棄の通報者に1万円の報奨金を支払うとする不法投棄防止条例を市議会に提案した群馬県桐生市の事例をはじめ(東京新聞2001.03.23)、郵便局員が不法投棄情報を提供するとした愛知県新城市や北海道ニセコ町、宮崎県宮崎市の事例、市民による監視制度の導入など、不法投棄予防対策に予算と人員をつぎこむ事例が数多く見られる。三重県を筆頭に、青森、岩手、秋田の北東北三県や九州、中国地方においても、産廃税導入に向けた議論が進められている。
ごみ減量化の実践と検証も、多くの自治体現場で進められつつある。分別の細分類化は静岡県沼津市、香川県善通寺市、熊本県水俣市など古くからの取り組みがさらに広まり、徳島県上勝町の可燃物7種、33分別(徳島新聞2001.01.15)など、20品目を超える分別収集もめずらしくなくなった。愛知県名古屋市や宮城県仙台市など、都市型自治体ではすでに容リ法完全対応の自治体も出はじめている。分別による一定の減量効果を得た自治体では、さらなる減量の手段として有機系廃棄物(厨芥ごみ、剪定くず、廃食油など)の資源化が注目されており、有機系廃棄物からメタンガスを精製し、エネルギー源として活用する技術の実用化に向けた検討も進められている。
その一方で、収集処理へのコストと人員をこれ以上確保できない自治体も数多く見られ、ごみ処理態勢の自治体間格差が今後ますますひらくことも懸念される。

税金の過剰投入によるごみの収集運搬処理は、もはや限界域に達している。しかし、そうした現場の矛盾を抱える自治体自らが、産業界の生産体制に向けて改革を呼びかける動きはまだ見られない。自治体グリーン購入の動きも定着した感はあるが、今後はそうした運動が市民一人ひとりの大量消費・大量廃棄型ライフスタイルに対してどのような歯止めを課すのかというところまで踏み込んだ政策の展開が必要となる。そうした意味では、ここ数年さまざまな名称で各地に展開されはじめている環境配慮優良店舗のエコショップ認定制度や、東京都杉並区で検討されているレジ袋税など、市民をまきこんだ議論の広がりと定着が期待されよう。

E有害物質

ダイオキシンや内分泌かく乱物質等に関する実態調査は数多くの自治体でなされているが、あくまでもポイントでの汚染実態把握調査にとどまるものであり、物質自体の排出規制に関する対策は、特筆するような段階にない。ごみ処分場や焼却炉からのダイオキシン流出などに影響を受け、市民の関心が高まる中、具体的な排出規制など事前予防策と、アセスメントの早期対応が望まれる。

北海道では、シックスクール対策における学校の調査が今年度予算に計上されたが、化学物質フリー公共事業などの動きはまだ現れていない。

F 環境行政

この分野でもっとも多い報道は、ISO14001取得に関するもので19件(尼崎市、胆沢町、吉川町など。ISO9001とのダブル取得の滝沢町の記事も含める)。ついで多かったのは地球温暖化防止行動計画の策定で8件(倉敷市、田辺市、弘前市など)。ISO14001のほうが地球温暖化防止行動計画の記事よりニュースとして取り上げやすい側面もあろうが、法定計画の地球温暖化防止行動計画策定自治体が、自主的取り組みのISO14001取得自治体より少ないという実態は、好ましい状況ではない。今年発表されたIPCCの第3次報告では過去発表された2倍の気温予測が警告され、温暖化防止の取り組みを加速することは必至である。ISO14001の適用範囲がどこであろうと顕著な環境側面抽出、法律その他要求事項の遵守において地球温暖化防止ははずせない。ISO14001取得の自治体には温暖化防止に関する行動計画、目標などの適切性のチェックがマネジメント側にも審査側にも求められよう。また、ISO14001取得より法定計画策定に取り組むほうが明らかに優先課題である。来年度の進展状況が注目される。

環境保全条例、環境基本計画策定・見直しという記事は鳴門市、山形市など数件あった。現在、環境基本計画を市民参加で策定中の自治体や公害防止条例など過去の条例を環境保全の観点で検討している自治体の実際の動向に比べると、ニュースになる件数としては少ないという印象をもつ。

一方、率先行動計画、グリーン購入が記事としてほとんどないという点も目をひいた。率先行動計画はほとんど策定されているので、ニュースに取り上げにくいという点もあろうが、グリーン購入に関してはグリーン購入法の施行に伴い、自治体にはグリーン購入推進の定量目標化が求められている。定量目標を掲げている自治体はまだ少ないので、ニュースにしやすいはずである。したがってグリーン購入についての記事が少ないということは、現状ではグリーン購入に取り組む自治体が少ないということである。 さらに、産業廃棄物など特定の分野に関しては独自の税制を検討しているといった記事も数件みられた。地方自治法改正等、地方分権の動きが今度加速するのは必定で、今後、このような独自の社会インフラ整備を行う自治体の動向は注目する必要がある。

G 環境学習

取り上げられているテーマとしては全体として自然環境関連のテーマが多く、全体の4割を占めている。また水の問題とごみの問題についても全体の2割ずつを占め多くなっている。これに対し地球環境問題や大気環境の問題については両方あわせても1割程度を占めるに過ぎない。

自然分野では植樹や間伐などの森林体験、収穫などの農業体験、田舎暮らしなど地方における体験学習の記事が目立った。またエコツーリズムに関する講習会などの記事もみられた。野生生物ではシンポジウムが多く、イヌワシやホタルなど姿を消しつつある野生生物を題材に自然保護を考える催しが報道されている。また世界遺産に登録された地域を抱える屋久島(上屋久町、屋久町)や白神山地(藤里町、二ツ井町)などでも関連記事がみられた。

水に関しては、川などのよさの再認識を目的とした、川歩き・川遊びのほか、放流などの体験が多くなっている。市民による環境調査の記事はそれほど多くない。一方、シンポジウムや講演会も比較的多いのが特徴であるが、行政や外郭団体が主催するものが目立った。

廃棄物や有害物質に関しては、ごみ拾いなどの実践活動を通して学習するものが多く見られた。一方市民団体が主催するごみ問題や循環型社会を考えるシンポジウムや学習会も多くなっている。特徴的なのは豊島などを題材にした産廃問題に関するものがみられ、ダイオキシンに特化したタイプはほとんどみられなくなった。

地球環境や大気環境に関しては体験型の学習が極めて少なく、わずかにエネルギー関係では太陽光発電を活用した学習施設、ソーラーカーの製作や自転車試乗などが体験型学習に相当する記事である。印刷物としては環境家計簿の配布がいくつかみられた。シンポジウムで特徴的なのは公共交通の復権模索するシンポジウムが福井市、長崎市、高知市などで開かれていることである。地球温暖化を中心にした催しは極めて少なくなっている。

全体として総合学習の導入を控えた小中学校における環境教育の記事が目立っており、ビオトープづくりやリサイクル活動が多いものの、地域の人材を活用するなど体験型学習のメニュー・手法も多様化しつつあることがうかがい知れる。特に注目されるのはケナフ栽培体験が広がりをみせつつあることであり、賛否両論あるところである。

また生涯学習の拠点整備の記事がいくつかみられた。

H 住民参加

圧倒的に「地域情報・環境情報の市民への提供」が多い。実際には環境基本計画では春日井市、長岡京市など、総合計画策定では日野市、横須賀市、三鷹市など、さらには市民参加推進条例を市民とともに検討している石狩市などのように、市民参加を推進している自治体があるが、「公募市民を入れた委員会や市民会議の設置」は掛川市がごみ減量会議で12人の市民に委員委嘱を行ったという1件しかない。三島市のグラウンドワークのような協働の取り組みがなかなか普及しないというのが実情のようである。

景観条例への意見募集(北海道)、環境基本計画案の説明会(指宿市)、市民意見をいかした原案作成(高松市)、市民が主体であることをもりこんだ総合計画策定(熊本市)といった意見聴取レベルのニュースは数件みられた。まちづくりにあたってTMO(タウンマネジメント組織)構想検討というニュースも数件みられた。そのほか多かった記事としてはNPO税制優遇制度などNPO支援インフラ整備に関する内容である。

市民参加は日本ではまだ一般的ではなく、報道されにくい課題とは思えないことを考えれば、環境配慮の地域づくりに「パートナーシップ」「協働」「市民参加」をPRする自治体が多いが、まだかけ声に終わっているようである。その中で特筆すべき動向には、北川・三重県知事が講演会で津市の市民団体に政策評価の手法を伝授したという記事があった。政策評価に市民参加を行政のトップ自ら率先して実践するという例はほかになく、ほかの自治体に波及するかどうか注目すべき動向といえよう。