環境自治体スタンダード(LAS-E) 基本文書 第2.1

2003.10.1 制定

2004. 7. 8 改訂1.1

2005. 2. 21 改訂1.2

2006.3.17 改訂 2.0

2006.7.17 改訂 2.1

 

環境自治体会議LAS-E規格制定委員会

 

はじめに

環境自治体会議では「環境自治体」の必要条件として、3つの要素を提案している。すなわち、@環境優先や持続的発展の考え方を取り入れた政策があらゆる分野で実施され、A政策が体系化されその評価・見直しのしくみが取り入れられ、B市民主導により政策が実行されている自治体、と考えている。1997年以降、ISO14001などの環境マネジメントシステムを導入する自治体が急激に増えたことにより、環境負荷の把握、点検・公表・見直しのしくみの構築、第三者評価の実施などが多くの自治体で行われるようになったことから、第2の要素に関してはかなりの成果があがっている。しかし単に環境マネジメントシステムを導入すれば良いわけではなく、評価・見直しの質が問われるとともに、第1と第3の要素も一定水準にあってこそ環境自治体といえるのである。

これまでこのような、自治体の環境に関する取組みが「環境自治体」としてふさわしいかどうかをチェックするための目安は存在しなかった。その目安として制定するものが、この「環境自治体スタンダード(LAS-(ラス・イー)Local Authority's Standard in Environment)」である。その基本的事項を、2つの自治体における運用と規格制定委員会での約1年の審議を経て、ここに第1版として定めた。

LAS-EはISO14001の自治体版ではなく、より広い領域を扱ったものである。言い換えれば、環境マネジメントシステムの規格ではなく、政策の中身や市民参加の質も同時に問われる、自治体環境政策の目安である。LAS−Eは、環境自治体度をセルフチェックできるものさしとして活用可能であるが、外部から評価・認知されることも、自治体にとってはプラスになると考え、認定制度を設けた。

LAS-Eは、市民主導で個性的な取組みが実現すること、すなわち「市民自治」が実現することを期待して、市民の手による政策点検のしくみを内在している。したがって認定制度は地域独自の取組みを阻害するものではなく、より促進されるために活用されるべきものである。

今後さらに試行錯誤しながら規格内容を追加・改良し、完成版を作成することを目標としている。LAS−Eが近い将来、環境自治体づくりの支援制度のひとつとして社会的に認知されるものにしていくことを目指すものである。

 

1.目的と定義

1.1 目的

環境自治体スタンダード(以下、LAS-Eと称する)は、環境自治体としての取組み内容の目安を示すことを目的としている。この文書は、LAS−Eの内容やしくみに関する基本的事項を定めたものであり、LAS-Eに沿って環境自治体づくりに取組もうとする地方公共団体(以下、自治体とする)の指針となるものである。

1.2 構成

(1) LAS-Eの骨格は、この基本文書のほか申請基準総括表、共通実施項目一覧表、監査ガイドラインから構成する。

(2) 環境自治体づくりの視点に応じて、LAS-Eにエコアクション(環境活動)部門、エコマネジメント(環境経営)部門、エコガバナンス(環境自治)部門の3つの部門を設ける。

(3) 各部門ごとに、環境自治体づくりの熟度に応じ、第1ステージ、第2ステージ、第3ステージの3つの区分に分ける。

1.3 用語定義

(1) 「部門」と「区分」の組み合わせによって生じる9つの申請基準を「類型区分」という。

(2) LAS-Eに沿って取組むすべての自治体が、共通して取組むべき内容を「共通実施項目」とする。

(3) LAS-Eに沿って取組む各自治体が、独自に設定すべき目標を「独自目標」とする。

(4) LAS-Eに沿って取組むすべての自治体を「取組み自治体」と称する。

(5) LAS-Eに沿って取組みを進め、かつLAS-E事務局の判定を受けようとする自治体を「申請自治体」と称する。

(6) 申請基準総括表は、LAS-Eに申請するために満たさなければならない基本的な基準を定めたものとする。

(7) 共通実施項目一覧表は、LAS-Eを申請する自治体が共通に取り組むべき項目を定めたものとする。

(8) 監査ガイドラインは、監査の実施方法や手順などを定めたものとする。

 

2.取組み類型区分の申請等

(1) 取組み自治体は、申請基準総活表と当該自治体が実施しているまたは実施しようとする環境に関する取組み内容を比較参照して、取組み内容に応じた類型区分を選定する。

(2) 申請自治体は、取組みを開始する前に、選定した類型区分を、定められた様式に沿ってLAS-E事務局に申請しなければならない。

(3) 申請自治体は、取組み内容がどの類型区分に相当するかについて、LAS-E事務局もしくは事務局が派遣するスタッフのアドバイスを受けることができる。

(4) 申請自治体でない取組み自治体においても、LAS-Eの類型区分に沿って取組み内容を決定し、これを自己宣言することができる。ただし、自己宣言の場合にもLAS-E事務局に対し、その旨を報告しなければならない。

 

3.共通実施項目

3.1 共通実施項目の性質

(1) 共通実施項目とは、すべての取組み自治体が共通して取組むべき環境政策の内容、行政運営のしくみ、住民参加の方法などについての内容を示したものである。具体的内容は共通実施項目一覧表に示す。

(2) 共通実施項目は原則として、取組みの定量的な計測を必要とせず、その取組みを実施しているか否かで判断できる性質のものから構成する。

 3.2 共通実施項目の実施プロセス

(1) 取組み自治体は、前章で決定した類型区分に属する共通実施項目のうち、一定数以上について実施しなければならない。その数については、申請基準総括表に示す。

(2) 各項目の具体的な実施方法については、目標審議組織の意見を聞いて取組み自治体が独自に決定するものとする。

(3) 申請自治体は、各項目の具体的な実施方法について、LAS-E事務局または事務局が派遣するスタッフのアドバイスを受けることができる。

(4) 取組み自治体は、共通実施項目の実施状況について年1回以上把握しなければならない。

3.3 独自目標の位置づけ

(1) 独自目標は、環境に関する重点的あるいは個性的な目標であり、地域特性、行政組織や政策の現状、民間の環境保全活動、地域住民・事業者の意識などの実態に即して定めるものである。

(2) 各ステージのそれぞれの部門において、独自目標を設定しなければならない。独自目標の最低設定数は、申請基準総括表および共通実施項目一覧表で定める。

(3) 独自目標は、できる限り数値化または定量的な表現をとるものとする。

 

4.目標審議組織

4.1 目標審議組織の設置

(1) 申請自治体の首長は、自主的に目標審議組織を設置し、目標審議委員を任命・委嘱しなければならない。

(2) 目標審議組織は、次のメンバーによって構成するものとする。

・首長またはその代理(必須)

・地域住民(必須)

・事業者

・外部専門家

・行政組織の各部局の代表

なお、審議組織メンバーは、地域住民、事業者または外部専門家が半数以上を占めなければならない。

(3) 申請自治体は、目標審議組織が設置されたことを、申請時にLAS-E事務局に報告しなければならない。

(4) 目標審議組織は、地域住民や事業者と行政で構成する既存の組織が兼ねることもできる。

4.2 目標審議組織の役割

(1) 目標審議組織は、次の事項について審議するものとする。

           ・共通実施項目のうち独自目標の内容

・共通実施項目のうち独自目標以外の項目の具体的な実施方法

・その他取組み実施にあたり必要と思われる事項

(2) 独自目標は目標審議組織が策定するが、事務局が原案を作成することもできる。

(3) 独自目標以外の項目の実施方法については、取組み自治体が最終決定するが、目標審議組織は、これに対する意見を言うことができる。

(4) 目標審議組織は、各目標の設定方法について、LAS-E事務局または事務局が派遣するスタッフのアドバイスを受けることができる。

 

5.実施体制

5.1 推進組織

(1) 取組み自治体は、当該類型区分の取組みを進めるに十分な、権限と責任が明確になった推進組織を整備しなければならない。

(2) 推進組織は、共通実施項目および目標審議組織が決定した独自目標への取組みを推進する役割を担う。

(3) 推進組織は、取組み自治体の各部署で構成され、庁内横断的なものでなければならない。

(4) 推進組織は、環境基本計画や率先実行計画の組織など、既存の組織が兼ねることもできる。申請自治体は、推進組織の構成や役割について、LAS-E事務局または事務局が派遣するスタッフのアドバイスを受けることができる。

(5) 推進組織は、目標審議組織に対し、組織の実情に応じた独自目標や目標値を提案することができる。

5.2 推進事務局

(1) 取組み自治体は、推進組織のもとに、実務を担当する推進事務局をおかなければならない。

(2) 推進事務局は、次の役割を担うものとする。

・目標審議組織や監査チームとの連絡・調整および会合開催に必要な実務

・環境マネジメントシステムの実施状況・達成状況の集約や関係部署への連絡

・LAS-E事務局との連絡・調整、文書類の提出・受領

・その他取組みの推進、評価などに関わる必要な実務

5.3 文書類

(1) 推進事務局は、取組みの具体的事項や実施手順についての文書を、取組み自治体の実情に応じて必要に応じて作成する。

(2) 推進事務局は、監査チームおよびLAS-E事務局に対し、監査等に必要な文書を作成し、事前に提出しなければならない。

5.4 教育訓練

(1) 取組み自治体のすべての職員は、LAS-Eに沿った取組みの開始前または判定申請前までに、LAS-Eに基づく取組みに関する研修を、受けなければならない。

(2) 研修は、取組み開始後、少なくとも年1回以上実施しなければならない。

(3) 申請自治体は、上記研修の講師の派遣をLAS-E事務局に依頼することができる。

 

6.監査

6.1 定義

 監査とは、共通実施項目に関する取組みの実施状況や、独自目標の達成状況について検証するものである。

6.2 監査チーム

(1) 取組み自治体の首長は、推進組織とは独立した監査チームを自ら設置し、監査委員を任命・委嘱しなければならない。

(2) 監査チームは、次のメンバーによって構成するものとする。

・地域住民(必須)

・事業者

・環境政策の専門家

・行政組織の各部局の代表

なお、監査チームメンバーは、地域住民、事業者または外部専門家が半数以上を占めなければならない。

(3) 申請自治体は、監査チームのメンバーのうち環境政策の専門家として、LAS-E事務局員または事務局が派遣する専門家をあてることができる。

(4) 監査員の任命または委嘱は、取組み自治体の首長が行うものとする。

(5) 監査チームは、監査員の互選などによって、主任監査員を選定する。また、主任監査員の職務代行者や、副主任監査員をおくことができる。

(6) 監査チームには、目標審議委員会のメンバーから複数の地域住民および事業者が参加することが望ましい。

(7) 監査チームは、以下の役割を担う。

・監査に必要な資料の収集

・監査計画の立案

・監査の実施

・監査結果報告書の作成

・被監査組織への監査結果の報告または是正勧告

(8) 主任監査員は、上記の各役割を中心となって実行するとともに、監査の結果について最終的な判断を行うものとする。詳細は監査ガイドラインに示す。

(9) 監査チームは、被監査組織から監査に必要な資料の提供を要請したり、必要に応じて実務面の支援を受けることができる。

6.3 監査の実施

(1) 監査チームは、年1回以上監査を行わなければならない。これは合格後も、引き続き行うものとする。

(2)  監査チームは、取組みの開始後、3ヶ月以上経った時点で独自目標を除く共通実施項目についての監査を実施するとともに、独自目標が設定されていることを確認する。

(3)  監査チームは、年度終了後に改めて独自目標の達成状況を監査する。

(4)  監査チームは、LAS-E事務局が示す監査ガイドラインに沿って、監査を行わなければならない。

(5) LAS−E合格後に継続して実施する監査については、部署ごとに監査の時期を変えることもできる。

(6) 申請自治体の監査チームは、共通実施項目の監査方法に関して、LAS-E事務局が派遣するスタッフの研修を受けることが望ましい。

6.4 その他

  その他本章で定めていない事項については、別途監査ガイドラインで示す。

 

7.是正・見直し

7.1 監査結果の報告と是正勧告

(1) 監査チームは、監査終了後、すみやかに監査報告書を作成するものとする。

(2) 監査チームは、監査結果について、首長および目標審議組織に報告しなければならない。

(3) 監査チームは、監査の結果、不十分を見られた項目等について、是正を勧告することができる。

(4) 監査チームは、是正措置が完了したがどうかについて、少なくとも次回の監査時に確認しなければならない。

7.2 是正措置

(1) 取組み自治体は、監査チームから是正勧告がなされた場合には、すみやかに是正措置を講ずるか、その方法を検討しなければならない。

(2) 取組み自治体は、独自目標の達成状況などについて、目標審議組織に報告しなければならない。この際、年度目標値が未達成あるいは期別目標値が2期連続未達成であった場合は、その理由と改善対策を検討し、目標審議組織に報告しなければならない。

(3) 目標審議組織は少なくとも年1回、独自目標や取組み内容について再検討し、その結果をすみやかに推進事務局に報告しなければならない。

(4) 取組み自治体は、目標審議組織からの意見を踏まえ、新たな取組みや必要な見直しを行わなければならない。

7.3 監査結果および是正措置の公表

(1) 監査終了後、申請自治体の首長は、監査結果を議会に報告するとともに、地域住民へ公表しなければならない。

(2) 申請自治体の首長は、監査チームから是正勧告が出された場合は、是正内容や是正方法検討結果を公表しなければならない。

 

8.合否判定の申請

(1) 申請自治体は、共通実施項目の監査の結果、当初申請した類型区分において、申請基準総括表に示す内容を満たしていると判断した場合は、LAS-E事務局に対し合否判定の申請をすることができる。ただし独自目標は初回の審査時に限り、目標設定されていれば達成状況の監査をしていなくても申請することができる。

(2) 申請自治体の事務局は、当該自治体の取組み内容がLAS-Eに準拠している証拠を、LAS-E事務局に提出しなければならない。

(3) 証拠として提出する書類は以下のものとする。

・合否判定申請書

・目標審議組織開催記録

・独自目標一覧

・環境マネジメントシステム運用体制を示す書類(組織図や要綱文書など)

・LAS-Eに関する教育研修記録

・監査報告書および監査チェックシート、

(是正勧告書が出された場合はこれも提出する)

・監査結果を議会や地域住民へ公表した証拠書類

・その他合否判定に必要と思われる書類

 

9.合否判定

9.1 判定委員会

(1) 判定委員会は、申請自治体の環境に関する取組みがLAS-Eに準拠しているかどうか、また当該自治体の監査チームが適正な監査を行ったどうかを提出書類に基づき審議し、合否を判定する。

(2) 判定委員会は、原則として年2回行う。

9.2 判定プロセス

(1) LAS-E事務局は、申請自治体から前章に示した書類が提出された場合、直近の判定委員会に合否の審議を付議するものとする。

(2) 判定委員会から合格との判断がなされた場合、LAS-E事務局はすみやかに、合格証を申請自治体に送付しなければならない。

(3) 判定委員会は、合格した自治体の年1回の監査報告についても、取組みの継続状況を点検し、所見を作成するものとする。

(4) 判定委員会は、合格した自治体の取組みが著しく減退していると判断される場合は、取組みの改善を勧告することができる。また、勧告の結果、改善がみられない場合には、合格を取り消すことができる。

9.3 合併等による特例

(1) 合格した自治体が合併等によって消滅した場合、消滅した日から2年間は旧自治体の範囲での合格を有効とする。

(2) 前項に該当する場合においても、旧自治体の範囲で年1度の監査を継続しなければならない。

 

10.規格の改定等

(1) LAS−E(この基本文書のほか申請基準総括表、共通実施項目一覧表、監査ガイドライン)の制定・改定は、LAS-E規格制定委員会が行う。

(2) LAS-E規格制定委員会および判定委員会の詳細については、別に定めるものとする。

(3) この基本文書の改定にあたっては、判定委員会や会員自治体などの意見を適宜聞くものとする。

(4) 第1版は、2003101日より施行する。